キャンピングカーは、普通乗用車とは異なる運転感覚と、特有のリスクが潜んでいます。その中でも取り返しのつかない事態を招くのが「転倒事故」です。高速道路で横転したトラックやバスの衝撃的な映像をニュースで目にすることがありますが、これはキャンピングカーにとって他人事とは言えません。
本記事では、大切なキャンピングカーを守るために不可欠な知識を解説していきます。
キャンピングカーが転倒しやすい理由
重心が高い
多くのキャンピングカー、特に居住空間の広いキャブコンは、トラックなどのベース車両のシャシーの上に、居住用のシェルを架装して作られています。これにより、車両全体の重心が、一般的な乗用車に比べて著しく高い位置に来てしまいます。
背の高いグラスが低いグラスより倒れやすいように、重心が高い物体は、少しの傾きでも倒れようとする力が大きく働きます。カーブ走行時の遠心力や、横からの強い風を受けた際に、この高い重心が車体を外側へ大きく傾け、転倒の引き金となるのです。
車両重量
キッチンやベッド、家具、そしてたくさんの荷物や水を積んだキャンピングカーは、車両総重量が3トンを超えるモデルも珍しくありません。物理の法則で、重い物体は一度動き出すと止まりにくく、また曲がりにくい性質を持っています。
普通車と同じ感覚でブレーキを踏んでも、制動距離は遥かに長くなります。同様に、急なハンドル操作に対して車体はすぐには反応せず、ワンテンポ遅れて大きく揺さぶられるような挙動を示します。この「重さ」が、いざという時の回避行動を困難にし、転倒のリスクを高める大きな要因となるのです。
広い側面
キャンピングカーの側面は、窓が少なく平らな面が広いため、まるでヨットの「帆」のような役割を果たしてしまいます。走行中に真横からの強い風を受けると、この広い側面積全体で風の力を受け止め、車体を横に押す強烈な力、「横力」が発生します。
この横力が、「高い重心」と組み合わさることで、てこの原理のように車体を傾ける強大な力を生み出します。特に、風を遮るものがない橋の上やトンネルの出口など、急に強い横風に晒される場所では、この力が最大になり非常に危険です。
転倒を回避するために心がけること
急な操作はしない
「急ハンドル」「急ブレーキ」「急加速」「急な車線変更」。これらはすべて転倒を引き起こすリスクがあります。キャンピングカーを運転する際は、常に心に余裕を持ち、すべての操作をゆっくり滑らかに行うことを意識してください。
速度は控えめを意識する
高速道路の最高速度が100km/hだとしても、それは普通車のための速度です。キャンピングカーで同じ速度を出していると、車線変更や減速の際に転倒や事故のリスクが高まるので、最高速度を無理に出さず、10〜20km/h低い速度で、左車線をゆったりと走ることを意識すると事故を防ぐことができます。
車間距離は長めをキープする
重いキャンピングカーは、前の車が急ブレーキを踏んだ際、普通車と同じ車間距離では追突のリスクがつきまといます。追突を避けようと急ハンドルをきると、バランスを崩して転倒してしまいます。常に普通車の倍以上の車間距離をキープすることで、仮に先頭車両がブレーキを踏んでも急ブレーキを踏むことなく運転することができます。
荷物を片方に偏らせない
転倒リスクを少しでも減らすため、重いものを左右どちらかに偏らせないようにしましょう。また、左右だけでなく、前後の重心にも気を使う必要があります。更に、重いものは床に近い低い位置に積みましょう。高い位置に積んでしまうと重心が高くなり、転倒を起こしやすくなります。
天候によっては外出を控える
出発前には、必ずルート上の天気予報、特に「風速」を確認する習慣をつけましょう。「強風注意報」や「暴風警報」が出ている場合は、計画の見直しや、出発を延期する冷静な判断も事故を防ぐために必要です。
まとめ
キャンピングカーは、「重心が高く、重く、風に弱い」。この3つを理解したうえで、穏やかな運転を心がければ、安全に楽しくキャンピングカーライフをおくることができます。
転倒事故は、機械の故障ではなく、そのほとんどがドライバーの「過信」や「油断」、「知識不足」から生まれます。「このくらい大丈夫だろう」という安易な判断をしないためにも、常に「かもしれない運転」を徹底し、天候が悪い日や少しでも不安を感じる道では決して無理をせず冷静な判断を心がけましょう。